建築基準法12条5項について
COLUMN
用途変更をおこなう際、必要になる書類や設計図書がいくつかあります。
その中でトラブルになる書類、それが「検査済証」です。
検査済証とは、確認申請時に提出された申請書類通りにその建物が建てられているか、
完了検査という役所や民間確認審査機関のチェックを受けた証です。
この検査済証が無ければ、工事がきちんと完了したことが証明できませんので、
途中で設計変更や、建築設備の不備等があっても判断がつきません。
この完了検査で検査済証を発行するという行為は、建築基準法で定められていますので
当然あたりまえの工程だと思う方が多いでしょう。
ですが実際は完了検査には申請手数料がかかり、また建築途中の設計変更等があれば
計画変更などの手続きを踏まなければなりません。
そういったこともあり、実は検査済証が発行されていない建築物がまだまだ多くあります。
では、検査済証がない建築物を用途変更することはできないのでしょうか?
検査済証が無いという責任は工務店やハウメーカーなどの建築する側に多くの責任がある為、買主や施主には把握していないことが多々あります。
よって何も知らない消費者を守るため、様々なガイドラインがでています。
それが建築基準法12条5項になります。
この法律を簡単に言うと、特定行政庁や建築主事、つまり確認審査機関等は建築物の敷地や、構造、建築設備、用途などの現状、施工状況を報告書としてまとめて提出すれば
適合と判断されるというものです。
つまり救済処置になります。
一般的な流れとしましては、
用途変更を計画する→建築物の検査済証がない→建築完了時の適合性が証明できない→
基準法12条5項の報告書を作成・提出
これにより用途変更が可能となります。
ただこの報告書については、建築基準法で定められているだけで、具体的で細かな形式が決められているわけではありません。
そこで国が基準法とは別に「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」というものを発表しています。
平成26年に発表されたこのガイドラインは、現行の基準法に合わせるべき内容はもちろん適合しているという報告書を作成、申請することにより、昨今の既存住宅ストック問題に対して、背中を押す制度です。
これにより今まで検査済証の発行が無い建築物も、しっかり活用することができるチャンスがあるということです。
ただこのガイドラインに記載されている申請フローをみると、なかなかのボリュームです。
既存建築物を調査するわけですから、測量図や建築設備図、構造図書にはじまり、たくさんの項目があります。
結果から言うと、完了検査を受けて、検査済証を発行してもらい、保存し、用途変更はもちろん、増築や改築、不動産の売買などにも活用するのが一番無難だと思います。
無い場合の救済処置としてガイドラインに基づき、しっかり報告書を作成すれば大丈夫ですが、そういった時はしっかり専門家の方に依頼して、時間に余裕を持って手続きの準備をしましょう。
いかがでしたでしょうか?
一度建てた建築物を用途変更や増築、改築する場合、どうしても手続きが必要になります。
それは建築物が人の命に大きく関わるものだからです。検査済証はいわゆる建築物のカルテのようなものです。ただ無いからといって諦めることはないのでガイドラインを使って
しっかり専門家に依頼しましょう。