用途変更と既存不適格建築物について
COLUMN
近年、既存の建築物(現在建築済・使用されてる建築物)を用途変更して事業を展開したり増築などをするケースがよくあります。
街中が建築物で飽和状態な時代背景、初期投資の節約の目的で「既存建築ストック」に対するニーズが高まっているからです。
さて今回はその中でよく問題視される「既存不適格建築物」について簡単に説明させて頂きます。法律用語で馴染みにくい漢字だらけの文字ですが、簡単にいえば建設時当初は法律に適したが、建築基準法の改正や地域の条例が変更になってしまい、現在の法律に適さなくなってしまった建物のことを言います。
市役所などの行政、消費税や法人税などの制度変更は私達が変化に対応すれば適応できますが、街中に建築されている建物はそう簡単にいきません。いきなり避難階段を設置しなさいという命令や、建築設備を追加や変更することは現実的に厳しく、また数も膨大で管理ができないのです。
そこで、既存不適格建築物は用途変更や増築で、その建物に何かしらの構造的変更や、使用用途を変更する場合、そのタイミングで検討しましょうといった話になります。
増築する場合である場合は、その部分だけでなく既存している建築物も現行の基準法に適合されるのが原則ですが、緩和規定もありますので建築基準法に詳しい専門家や、行政に確認されたほうが良いでしょう。(とても読みづらい法文になっています)
用途変更、つまり建築物を使用する用途を建築時当初と異なったかたちとする場合も基本的には現行の法律に基づいて判断します。
建築物の安全性が著しく低下すると、建物の利用者が被害をうける危険がありますので、各用途に応じた法律や技術的基準(建物の防火規定など)に適合する必要があります。
特に学校や保育園、病院や高齢者施設といった大多数の人が利用する施設(特殊建築物)に用途変更する場合は、避難規定(避難方法や避難設備の見直し)、採光規定(部屋の明るさは確保できているのか)、防火規定(建物の燃えにくさ、避難できる時間が確保できるか等)などの安全性がしっかり確保できているのかが大切になります。
建物規模によりますが、建築確認申請や工事完了の届出が必要になる場合もありますのでしっかり事前に調査することをお勧めします。
ただ、用途変更による既存不適格建築物は、法令に適合するために一定の猶予をもらえる場合もあります。そして建築物すべて(全体)を適合される必要がある部分と、用途変更部分を適合させれば良い場合もあります。
例えば、準耐火建築物→耐火建築物にしなさいといった生命に関わる不適格箇所は現行の法律に適合しなければなりませんが、界壁規定(防音効果)や換気、採光などの規定は、用途変更する箇所を適合すれば問題ないと判断されるケースもあります。
行政によっては必要な書類も異なりますが、「既存不適格調書」や「チェックシート」、「現場調査シート」などが大まかなものとなります。
何より用途変更する場合は、既存の建築物と見比べて変更する箇所を行政と確認するわけですから、建築時当初の確認済証や検査済証、申請時の図書があると、とてもスムーズに進めることがきでます。
まずは当時の書類が手に入るのか、建物が適切に維持管理されているのかを確認しながら専門家に相談することをお勧めします。
いかがでしたでしょうか?
今回は用途変更時に起きる問題「既存不適格建築物」について述べましが、建築基準法の適用除外や適用必須の条例を読み砕き理解するのはとても難しいです。
何よりも申請時の書類や図面など、行政に提出したものはしっかり管理し、自分が用途変更する立場になった場合、また建物を売買する場合も困らないようにしたいものですね。